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■人権制度の未整備
いま日本に住む外国人は、210万人以上となります。外国人登録者の出身国(地域)数は190カ国に及び、ほぼ全世界から日本に来て働き、生活していることになります。また、日本国籍を取得した外国人や、日本人と外国人との国際結婚から生まれた「ダブルの子ども」たちなど、外国にルーツを持つ「日本国民」も急増しています。
このように日本社会は今、「多国籍化・多民族化」が進行しています。しかし日本では、諸外国では設けられている人権法制度、たとえば国内人権機関や人種差別撤廃法、外国人の地方参政権、国際結婚家庭に対する多文化家族支援法、複数国籍の承認など、もっとも基本的な人権法制度が、いずれも実現していないのです。
■外国人制度の全面的改編と改悪
その一方で今年7月9日、入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定法が施行されます。その改定法の実施に伴って、外登法は廃止されます。
これまでの外登法では、日本に90日以上滞在する「すべての外国人」を対象にしてきました。ところが改定法は、「中長期在留者」という新しいカテゴリーを設けて、特別永住者/中長期在留者/非正規滞在者に分断し、在日韓国・朝鮮人など旧植民地出身者の「特別永住者」をこれまでと同様に管理する/「中長期在留者」をこれまで以上に徹底的に管理する/「非正規滞在者」をこれまで以上に徹底的に排除する――という法制度を作り上げました。
とりわけ中長期在留者(約170万人)に対しては、さまざまな管理制度が新設され、それらが彼ら彼女らの日常生活をくまなく監視することになります。たとえば住居地変更の届出が14日を超えて遅れた場合、日本人にも「住民基本台帳法での行政罰:5万円以下の過料」が定められていますが、実際にはほとんどが始末書1枚で済んでいます。しかし、中長期在留者の外国人に対しては、それに加えて「入管法での刑事罰:20万円以下の罰金」、さらに90日を超えて届出が遅れてしまったら「入管法での在留資格取消し(退去強制)」になります。このような「加重された罰則制度」について、日本は、在日外国人をはじめ世界に対して、その合理的根拠を示さなければなりません。しかし、立法府も行政府も、このように日本国民と区別して扱うことに対して正当化できる根拠も、論理も明らかにしていません。
■外国人の「人間としての尊厳」を奪う改定法
これまでの「外国人登録証明書」に替わって、中長期在留者の外国人が常時携帯を義務づけられる「在留カード」の記載事項に、「就労制限の有無」があります。在留カード表面の中央に、囲み罫で(1)「就労不可」、(2)「就労制限なし」、(3)「在留資格に基づく就労活動のみ可」のいずれかが太字で記載されます。このような項目を設けて特記することは、外国人を「人間」として「生活者」として扱うのではなく、「労働力商品」か否か、とみなす発想に基づくものです。これは、日本社会に暮らし「地域社会」を日本人と共に構成している外国人一人ひとりの「人間としての尊厳」をふみにじるものです。
16歳の誕生日を迎えた外国籍の高校生のことを、考えてみましょう。その多くが「永住者」「定住者」「家族滞在」という在留資格となっている生徒は、16歳の誕生日までに学校を休んで地方入管局へ行って、顔写真つきの在留カードを受領し、それを常時携帯しなければなりません。しかも、そのカードには、在留資格によって「就労不可」「就労制限なし」と記載されます。その上、在留資格が「家族滞在」となっている高校生は、別途、地方入管局で「資格外活動許可」を得なければアルバイトもできません。
このような在留カードを常時携帯させ、しかも、(修学旅行時を除いて)日本への再入国のたびに指紋と顔画像を繰り返し登録させる。それを16歳の子どもたちに強いる国家と社会は、それこそ醜悪です。この改定法を支えているのは、日本人であり、この日本社会なのです。
■私たちは、
■多民族・多文化共生社会をめざす協働者です
7月9日から実施される改定法に対して、私たちは「NO ! 」と宣言します。
なぜなら私たちは、
東北の被災地において大学進学をあきらめて絶望する子どもであり、
配偶者を喪って途方にくれる外国籍女性であり、
無年金のまま放置され続けている在日韓国朝鮮人・台湾人であり、
配偶者の暴力に逃げる術もなくうずくまるしかない移住女性であり、
金融危機・東日本大震災の「派遣切り」によって職場を追われた移住労働者であり、
迫害を逃れて日本に来たものの、収容、そして衣食住が与えられないまま仮放免とされる難民申請者であり、
日本の学校にも外国人学校にも行けず、独りテレビ画面を見つめながら一日中を過ごす子どもであり、
そして、これらの現実が大多数の日本人にとって「知らなかった」「仕方ない」ものとされようとすることを見過ごすことができず、彼ら彼女らと日本で共に幸せに生きたいと願う者であるからです。
私たちは、この地、この社会で共に働き暮らす人間なのです。
私たちは、改定法に「NO ! 」と宣言します。
そして私たちは、この地に住む一人ひとりが「人間としての尊厳」が生かされて輝く社会、「多民族・多文化共生社会」をめざす協働者として生きることを、ここに宣言します。
2012年7月7日
<呼びかけ>
外国人人権法連絡会
移住労働者と連帯する全国ネットワーク
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会